火曜日, 3月 21, 2006

プーランク:人間の声 序文

音楽解釈のためのメモ
1.人間の声、唯一つの登場人物は、 
 若くエレガントな女性でなくてはならない。
2.この作品の中でとても重要なのは、 
 フェルマータの長さをどう演ずるかということだ。 
 この点について、指揮者は歌い手と 
 あらかじめ綿密に打ち合わせする事。
3.伴奏の無い歌の部分は、演出により 自由に歌うことが出来る。 
 恐怖から突然静寂へ、あるいは逆の表現など。
4.作品全体が、官能的なオーケストレーションに 浸りきっていなくてはならない。    
  Fプーランク

人間の声
薄暗く、蒼白く照らされた女の部屋。
下手には乱れたベッド。 
上手には白い洗面の部屋の扉が半開きになり、
そこから明るい光が漏れている。
センターには低い椅子と小さな机。
机の上では、ランプが残酷な光で電話を照らしている。
幕は殺しのあったようなこの部屋をむき出しにする。
ベッドの手前の床。 ロングネグリジェを着た女が
、独り、死んだように横たわっている。
沈黙。
女は身を起こし、姿勢を替えて、またジッとしている。
とうとう女は決心をし、起き上がり、ベッドの上のコートを手にする。
それから、電話の前でしばし立ち止まった後に、出口へと向かう。
女が扉に手をかけたとき、電話のベルが鳴る。
女は電話に向かって駆け寄る。
持っていたコートは邪魔になり、女はコートを蹴飛ばす。
女は受話器を取る。
それから彼女は立ったまま、座ったまま、
あるときは後ろ向きに、または前を向いて、またある時は横向きに、
肘掛け椅子の後ろに跪いて、執拗に頭をもたせかけたりしながら、
最後、うつぶせにベッドに倒れこむまで、
電話のコードを部屋中で引きずりながら、大股で歩く。
最後には、女の頭はガックリと傾き、
そして受話器は石ころのように、
女の手から転がり落ちる。
  ジャン・コクトー

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