水曜日, 3月 22, 2006

プーランク: 人間の声 1

(動揺して)
もしもし! 違いますわ マダム
混線しているんです。
お切りになって。
(そっけなく)
あなたも私も加入者・・
いいえ、マダム、あなたもお切りになって。
もしもし、マドモアゼル
いいえ、違います。
シュミット先生の家ではありません。
08です。07ではありません! もしもし・・
おかしな話・・・
そんなこと言われても、わからないわ。
もしもし! まあ、マダム、
私にどうしろと?
何? 私がいけないと?
とんでもないわ。
もしもし、マドモアゼル、
どうかマダムに電話を切るようにおっしゃって。
(電話を切る)
(電話が鳴る)
もしもし、・・・あなた?
ええ、元気よ。
電話が混線していて、大変だったのよ。
ええ・・・ そうよ・・・ いいえ・・・
丁度良かったわ。
10分前に戻ってきたばかりよ。
それまでに電話をくれたかしら?
ああ! 違うのよ。
外で食事をしていて・・ マルトのところよ。
今、11時15分ね。 あなたはもう家?
だったら、振り子時計を見たら?
そうだと思った。
ええ、あなた・・・ 昨日の夜?
昨日はすぐに横になって・・
でも寝付けなかったから、
お薬を・・・
いいえ、一錠だけよ、9時だったわ
少し頭痛がして、
でも、元気を出そうと・・・
マルトが来たわ。一緒にお昼を食べて、
それからお買い物を・・
その後帰ってきて・・
それから・・・  何? ・・・ 大丈夫よ。
乗り越えようと頑張っているの。
それから?・・
それから着替えをして、マルトが迎えに来て、
彼女のところから帰ってきたところよ・・・
彼女は頼りになる人よ。
見かけとは違うわ。
あなたの言うとおりね。 いつも。
・・・バラ色のドレスに、黒い帽子よ。
そう、まだ帽子をかぶったままなの。
あなたは? もう家かしら?
ずっと家に居たのかしら?
何の訴訟? ああ、そうね。
もしもし! あなた、もし切れたら、
すぐに又かけ直してね。
もしもし!・・ いいえ、ここに居るわ。
あれね? あなたと私の手紙。
いつでもいいわ。取りによこして。
少し辛いけど・・ 解っているわ・
(とても激しく)
ああ! あなた、謝ったりしないで!
当然のことよ。
バカなのは、私よ。
優しいのね。(息まじりで)優しい・・・
私だって全然思っても見なかった。
こんなに気丈で居られるなんて。
(とても早口で)
お芝居? 何の? もしもし、 誰が?
私がお芝居をしているって?
解るはずよ、私にはそんなこと出来ない。
(熱っぽく、荒々しく)
違うわ! いいえ!・・・
(急に弱まって)
落ち着いているわ。・・ わかるでしょう?
(自由に、極端にはっきりと)
解るはずよ。
(静かに、優しく)
何も隠してなんかいないわ。
(断固としてでも特に責めたてずに)
いいえ、勇気を持とうと決めたの、そうするわ。
当然の報いなのよ・・
私、何も見えずに、
狂ったような幸せを望んだわ・・・
(恐怖に怯えて)
あなた、聞いて、もしもし、ねえ、
(突然ゆっくりと陰鬱に)
話をさせて頂戴。
みんな私がいけないの。 そうよ。
思い出して、ヴェルサイユでの日曜日。
その時の電報の事。 その時に、
行きたいといったのは私。
あなたに何も言わせなかった。
そんなことどうでもいいと言ったのも私。
(とても荒々しく、興奮して)
いいえ、違うわ、それは間違いよ。
私よ、私が最初に電話したのは、
火曜日よ。確かに・・
27日の火曜日。
(とても静かに)
わかるでしょう? 私、日付のことは良く覚えているの。
(とても静かに、無関心に)
お母様が? なぜ?
本当に、お気になさる事はないわ
まだ、わからない。 そうね、多分・・
ああ!だめね、すぐにはきっと無理。
あなたは?
(不安げにささやくように)
明日? そんなに早くなんて思わなかった・・
それなら・・・ 待って・・
とても簡単よ。
(息切れしながら)
明日の朝、袋を管理人のところに・・
ジョゼフを取りに遣してくれれば・・・
(とても静かに優しく)
まあ! 私なら、わかるわね。
ここに居るかもしれないし、
田舎で何日か過ごすのもいいわ。
マルトのところでも。
ええ、あなた。 そうよ、あなた。
(慌てて)
もしもし! これならどう?・・・
はっきりと喋っているのに。
(極端にはっきりと)
どう、聞こえるかしら?
聞こえているかしら?
(とても静かに優しく)
おかしいわね・・ 私には
あなたが部屋の中に居るみたいに、
良く聞こえるのに。
もしもし、もしもし!
何てこと! 今度は私のほうが聞こえにくいわ。
(とても静かに)
そんなことは無いけど、遠いわ、とても・・・
あなたは聞こえているの?
かわりばんこね。
(くつろいで)
いいえ、大丈夫、・・さっきよりも聞こえるわ。
でも、あなたの電話、響くわね。
あなたの電話機ではないみたい。
(優しくあまえて)
わかる? あなたが見えるの・・・
何のスカーフかって? ・・・赤よ。
シャツの袖を捲り上げて・・・
左手? 受話器を持っているわ。
右手? 万年筆ね・・
あなたはいたずら書きを・・・ハートや
星の形を書いているのね・・・
(おどけて)
ああ! 笑った!
私、耳に目がついているのよ。

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