木曜日, 10月 05, 2006

カルメル2幕3場

修道院の面会室。ブランシュの兄である、ドゥ・ラ・フォルス騎士が面会に来ている。
「あなたは目を伏せたままもう長い時間黙ったままだ。
それが兄を迎える態度だというのか?」
「神はご存知です。私はあなたを嫌な気持ちにさせたくないことを」
「手短に言うが、父上は、ここがもう安全ではないと言っているのだ」
「私が居るべき場所ではないのかもしれません。
でも私は満足しています。そう思うのです。」
「あなたは変わってしまった。今のあなたはぎこちなく、無理をしているようだ」
「ぎこちなく感じられるのは、私がまだ不慣れで不器用なためです。
幸せで解放された幸福を実行できていないのです。」
「幸せなのかもしれないが、解放されては居ない。
あなたには、そう簡単に自然を克服することはできないはずだ」
「まあ、それでは、カルメル会での生活が、
あなたには私の本質に適していると?」
「このような時代だと、みんなから羨まれていたような女性が、
よろこんであなたの立場に変わりたいと申し出るだろう。
辛いことを話すようだが、召使に囲まれ、一人きりの父上の姿が目に浮かぶのだ」
「あなたは、私が恐怖心からここに居るのだと言うのですか?」
「恐怖に対する恐怖とでもいうか、その恐怖に優越は無い。恐怖に過ぎない。
死の恐怖に身をさらすように、恐怖の危険を知るべきだ。
その危険の中に本当の勇気が・・」
「私はここでは単に、神に捧げる小さな生贄に過ぎません」
「ブランシュ、先ほどのあなたは、弱弱しく倒れてしまいそうに見えた。
私は、粗末なオイルランプの明かりに照らされ、子供時代を思い出した。
私たちがいがみ合うのも、ぎこちなさのため。
それとも、僕の小さなウサギは変わってしまったのか?」
「ああ、なぜ毒をまくように私を惑わせるの?
その毒のせいで危うく命を失うところだった。
そう、私は変わってしまったわ!」
「何ももう、怖くは無いのですか?」
「私はもう何からも傷つけられません」
「それではさようなら、愛しい人。」
「ああ、わだかまったままさよならをおっしゃらないで。
ああ、あなたはずっと長い間、私を憐れんでくださる・・
憐れみの代わりに、ただ、お友達のように私を認めてください」
「ブランシュ、今度はあなたが厳しいことを仰るのか」
「私は優しく愛情をこめてお兄様にお伝えしております。
でも、私はもう、小さなウサギではないのです。
私はカルメルの娘です。あなたのために苦しみを背負うのです。
ですから、お願い、私のことを戦友のように思ってください。
これからの戦い、それぞれのやり方で、
私の戦いも、危険を抱えたお兄様のものと同じなのです。」
兄は複雑な表情で部屋を出て行く。
ブランシュ倒れそうになる。
「しっかりしなさい!ブランシュ!」
「ああ!私は嘘をつきませんでしたか?自分を見失っているでしょうか?
ああ!私は彼らの憐れみに疲れ果てたのです。神よ、お許しを!
やさしくされるのはうんざりです。ああ、彼らにとって
私はずっと子供のままなのでしょうか」
「さあ、もう行かなくては・・」
「私は高慢でした!きっと罰せられるに違いありません」
「高慢に勝つ方法は一つだけ。それより高いところに行くのです。
誇り高く居なさい!」

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