木曜日, 10月 05, 2006

カルメル3幕2場

ドゥラフォルス家の書斎。荒れ果てている。
みすぼらしい格好をしたブランシュが火の番をしている。
ブランシュは召使同様に扱われている。
メールマリーが突然入ってくる。
「あなたは!」
「ええ、あなたを探しにきたのです。」
(取り乱し、おろおろして)
「私は今、自由ではなくて・・でも、何日かしたら、多分・・」
「何日か後ではだめなのです。今すぐに!何日か後には手遅れになるのです。」
「手遅れに?何故?」
「あなたを救うために」
「私を救うために?(怯えて)あそこは、安全だとでも仰るのでしょうか?」
「ここよりも危険は無いですよ、ブランシュ」
「(不安げに)信じられません。このようなときに、ここよりも安全なところがありますか?
死は高いところにやってくるのですから。でも私は疲れ果てています。(ガタガタ震えて)メールマリー。
(取り乱して)まあ!シチューが焦げてる!あなたのせいよ!何てこと!どうしたらいいの?」
「心配しないで、ほら、もう大丈夫です。何故泣いているのです?」
「あなたがとても親切だから・・でも、泣いていること自体恥ずかしいことです。
(やさしく懇願して)私は放っておいて欲しいだけ。構わないで欲しいのです。
(激しさの限りで)何を咎められるのでしょうか?私が何をしたのです?
私は神を侮辱したりしない。この臆病でさえ、神にそむかない。
私は、恐怖の中に産まれました。それを自ら体験し、その中でまだ生きている。
全ては恐怖心を軽蔑し・・つまり、私は軽蔑の中で生きているのと同じなのです。
長い間、そう思っておりました。それを言えないで居たのは、父が居たから・・
でも死んだわ。(ボソボソと)彼は数日前ギロチン刑になりました。
自分の家に居ながら、私は父とその名に値しない者です。
他にどうすれば?惨めな召使として生きるほかに・・?
(挑戦的に)昨日、彼らは私をぶったのよ。そう!ぶったのです!」
「不幸なこと、それは軽蔑されることではなく、自分自身を軽蔑することです。
キリストの聖なる臨終のブランシュ!」
「はい」
「ある住所をあなたに言います。受け取りなさい。
マドモワゼル・ローズ・デュコール サンドゥニ通り
彼女のところなら安全です。
ローズ・デュコール サンドゥニ通り
私は明日の晩、そこであなたを待ちます。」
「(陰気に)行きません。行けません。」
「あなたはきっとやってくるわ。」
「ブランシュ!お使いの時間だよ!」

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