火曜日, 3月 28, 2006

プーランク: 人間の声 3

(とても弱弱しく)
大丈夫よ・・
心配しないでね
(長い沈黙)
もしもし!・・・
切れてしまったかと思った・・
(とても静かに)
いい人ね、あなた。
可哀想なあなた・・ 困らせているわね・・
(不安げに)
ええ、お話を・・・ 何でもかまわない!
苦しいの・・ のたうちまわるほど
ただ、あなたが話をしていればいい・・
そうすれば、苦しくないわ。
目を閉じることも出来るのよ・・
(静かに官能的に)
わかるかしら?あなたの隣で、
あなたの胸に身を寄せている時に聞いた声・・
同じように感じるのよ・・
今夜は電話機を通して・・
(音楽が聞こえる)
もしもし!何の音かしら!
音楽が聞こえるわ!
ノックして、止めてもらうべきよ・・
(たたみかけるように叫ぶ)
こんな時間に、レコードをかけるなんて、
近所迷惑よ!
(音楽がやむ、長い沈黙)
(力尽きた様子で)
・・その必要は、無いわ。
どちらにしても、マルトの知り合いの
お医者様が、明日来てくださるし、
(疲労の極地で)
心配しないでね、本当よ。
彼女が様子を伝えるわ。
(取り乱して)
なんですって?
まあ、そんな・・ ずっと良いわ。
あなたからの電話が無かったら、
死んでしまうところよ。
(感情溢れて)
許してね。耐え難いわね、こんな会話・・
あなたは、よく我慢してくれているわ。
でもね・・解って・・苦しくて、苦しくて、
この電話線、これが最後の、
私たちを繋ぐもの・・
(長い沈黙)
一昨日の夜? 眠ったわ。
電話と一緒に、眠りについたの。
いいえ、そうではなくて、
・・・
ベッドの中で・・
(苛立って)
そうね、その通りよ、可笑しなこと、
ベッドの中で電話を抱えているなんて・・
でも、電話だけで、
あなたと繋がっていられるのだから・・
(優しく)
あなたが話しかけてくれるから・・
(とても神経質に、でも最初はこらえながら)
そう、あなたと付き合って5年、
あなたは私の全てだった。
あなたを待って時を過ごし、
帰りが遅いと、死んでしまったのかと思い、
そう思うと、私も死んでしまいそうになった。
あなたが側に居てくれても、結局、
居なくなるのが怖くて死にそうだった。
(ため息混じりに)
今は安心していられるわ。
あなたが、話しかけてくれるから。
(常に静かに、自由に)
そうよ、あなた、眠ったわ・・
何故なら、初めての夜だったから。
(常に静かに)
最初の夜は、眠れるの。
耐えられなくなるのは・・
(恐ろしく不安になって)
2日目の夜。 昨日のことね・・
3日目、そして明日・・
それからずっと・・・・
どうしたらいいのかしら!
(へとへとになって)
それに、眠ったとしても・・その後、
(とても惨めに、ゆっくりと)
夢を見るでしょう。
それから目覚めて、食事をして、
(取り乱して)
起き上がって、支度をして、
そして出かけるのよ・・でも何処へ?

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