水曜日, 4月 05, 2006

人間の声: ナレーションつきカット案

舞台は、1950年代のパリです。 
「電話」は当時一般に普及され始めたばかりでした。 
今の電話のようにコードレスで持ち歩けるものでも、
直接つながるものでもなく、
当時の電話は、交換台を通してかけられていました。 
この物語は、その「電話」を通してのドラマです。 
時に混線し、時に聞き取りづらくなったり、
突然切れてしまったりしながら、
この物語の主人公「女」のドラマは展開していきます。

さて、名前の無い主人公「女」は、一昨日、
5年友に暮らした恋人、
こちらも名前の無い「男」から別れを告げられました。
 「女」は、「男」が最後に約束した「電話」を待っております。
この物語は、その「電話」を通じて、
「終わり」を演ずる男と女のお話です。

こちらは「女」の部屋。 
薄暗い部屋、乱れたベッド、
その横で床にうずくまる女。 
女は死んでしまったかのように動かない。 
やがて、女はのっそりと起き上がると
マントを羽織って戸口の方へ歩き出す。 
そこでかかって来る電話。 女は飛びつく。 
1本目・・・ 間違い電話 
「シュミット先生ではありません」と女は苛立つ。
2本目・・・ これも間違い電話。 
そして3本目、待っていた男からの電話。
 女はひととき、安堵の表情を浮かべる。
男からの問いに「10分前に帰ってきたばかりよ」と答える女。
女友達のマルトと食事をしていたのだと、嘘をつく。
女は気になる。 男は家に居るのだろうか・・・? 
女は探る、男はごまかす。 
そして女は、男の問いに嘘を重ねる。
「少し頭痛がするけど、元気にしているわ。 買い物にも行って・・
バラ色のドレスに着替えて、黒い帽子をかぶっているのよ。」
しかしながら、女は常に動揺し、落ち着かない。
突如激しく、「電話が切れてしまったら、絶対にかけ直してね」
と凄んだりする。
そのうち男は切り出す。 女の家にある男の荷物のこと。
女は言う。
「何時でも取りに誰かを遣してね。
辛いけど、解っているから、
謝らないで! 私自身、想像もつかなかったくらい、
私、気丈でいるのよ。」

4?20

男は女の様子がおかしいという。 女は取り繕う。 
自分は強いのだと、そして自分が悪いのだと。 
女は自分がいかに我がままであったかを語る。 
男は、男の母親が、女の事を心配していると慰めるが、
女はただ、心配する必要はないと言う。
男はそれから唐突に明日、
荷物を取りに人を遣わしてもいいかと聞く。
女は、動揺しつつも、
管理人のところに預けるからと、気丈に言い放つ。
「私のことは心配要らないわ。 
ここにいてもいいし、
田舎で過ごすのも悪くないわ・・ 大丈夫よ」

26?31

女は少しずつ、心の乱れが隠せなくなる。 
男の優しい言葉に感謝し、頷きつつも、不気味に呟く。
「もし、あなたが、ただ器用に私を慰めてくれているなら、
電話は恐ろしい武器になるのよ。後を残さず、音も立てずに」
男は女を「意地悪だ」と言い放ち、そして電話は切れる。 
女はあわてて男にかけなおす。
しかしながら、男の家に居たのは召し使いのジョゼフ。 
そして、男の不在と、男は今晩家には帰らないということを知らされる。 
その直後、男からの電話がなる。
女は平静を装う努力をする。 
男は電話を切り上げようとする。
女はいよいよ動揺が隠せなくなる。 心配する男。
女は先ほど電話でついた嘘について話し始める。
「バラ色のドレスなんか着ていない。 
食事もしていない。ただ、電話を待って、
行ったり来たり、狂ってしまいそうだった。 
意味も無くあなたの家までタクシーを走らせて、
待っていたりしたのよ」
男はなだめ、正直に何でも話すようにとなぐさめる。
女は真実を語り始める。
「昨日の夜、眠れずに、睡眠薬を飲んだの。
でももっと飲めば、もっと眠れる。
全部飲んだら、夢も見ず、
目覚めることもないだろうと思ったの。」
女は昨晩自殺を図ったこと、
それも未遂に終わり、
死に切れずに居る事を告白するのだった。

46?64のcheriの前まで

「こんな会話、耐えられないわね。良く我慢してくれているわ。」
女は男に謝る。 それでも苦しみを解って欲しいと訴える。
一昨日、男に別れを告げられた女は、電話を抱いて眠った。
ベッドの中で。男と繋がるものの側で。 
女は言う。 「だって、あなたが、話しかけてくれるから」
そして女は、男との5年間を振り返る。
女にとって男だけが全てだった。
男を待つことで時を過ごし、男の帰りが遅いと、
死んでしまったのかと思う。
そして男が一緒に居る時でさえ、
又出かけていくのが怖くて死にそうだったと。
そして女は言う。
「今は、電話で話しかけてくれるから、生きていられるのよ」

73の3小節前?78

「安心してね、2度も続けて自殺なんて図る人は居ないわ。」
女は言う。 ピストルなんて持っていないし、買い方も知らないとおどける。
続けて女は恐ろしげに語り出す
「もし、あなたが嘘をついていたとしたら・・・ 
例えば・・・あなたが本当は家に居ないのに、
居るといっていたり・・・ 
それがあなたの優しさであっても、
あなたへの想いは増すばかりなのよ」
そして突如電話が切れる。 
女は祈る「もう一度電話をかけて!」
そして程なく電話が鳴る。
「わかってるわ。そろそろおしまいね。・・でも辛いわ。
向かい合って話をしているみたいなのに、終わってしまったら、
急に遠くになってしまう・・・」
そして女は再び自殺をほのめかす。
電話の線を首に巻きつけているのだと。
そうして終わってしまったら、
男は女よりも辛い別れになるだろうと。
男は、マルセイユへ行く話しを始める。
女は、いつも2人で泊まったホテルには行かないようにと願う。
女は吹っ切れたように男に電話を切るように言う。
最後に「愛している」という言葉を繰り返し、
女の声は微かなものになっていく。

91の1.5小節前?最後

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