火曜日, 4月 25, 2006

人間の声 雑記

女が落ち着かないとき、
女が途方に暮れているとき、
女が訴えているとき、
女が取り繕うとき・・・・

女は死んだように床に倒れている。
やがてむっくり起き上がる。
乱雑に放ってあるマントをまさぐり取る。
電話の前までそのまま歩く。
立ち止まって電話を見つめる。
感情があふれ出し、
戸口のほうへ駆け出す・・

電話 ・・ 急いで駆け戻り電話を取る。
間違い電話・・ただ苛立つ。
電話・・・ 苛立ちの局地・・
女は頭を抱えて座り込む。
電話・・ 男から、立ち上がる。
女は取り繕い続ける。
右、左、後ろ、とひっきりなしに歩き回る。
「大丈夫なのか」と聞かれてふと立ち止まり、
そして「がんばっているのよ」と言いながら座り込む。
そのあとも同様に取り繕う。
「あなたは?あなたは何をしているの?家?」
と問い詰めるところで、電話のほうにじっと向かう。
「もし切れたら・・」電話のおいてある台にしがみついて、
訴えかける。
男の荷物の話になって、女は椅子にすわる。
放心状態になっている。

続く

月曜日, 4月 10, 2006

人間の声: 雑感その3

この作品は、殆どがレチタティフなので、
呼吸の全てが難しい。
ミステリー番組を参考にと思ったが、
もともとあまり見ない分野だからか、
途中で眠たくなる。
おまけに全ての「間」には相手のリアクションと、
それに対する自分のリアクションを含まなくてはならない。
それよりも、それ以前に第一、
フランス語が沁みていかない。
100回近く読み込んで、もう暗譜も出来ているのに、
口が回らないのだ・・・
前途多難・・・・

水曜日, 4月 05, 2006

人間の声: 雑感その2

ナレーションを考えてみると、とても客観的になる。
そうかそうか、これは、ミステリーだ。サスペンスだ。
女が死んでしまったとしても、生き延びたとしても、
その後でもドラマが展開する。

今後の役作りは、ミステリー番組を参考にしよう。

人間の声: ナレーションつきカット案

舞台は、1950年代のパリです。 
「電話」は当時一般に普及され始めたばかりでした。 
今の電話のようにコードレスで持ち歩けるものでも、
直接つながるものでもなく、
当時の電話は、交換台を通してかけられていました。 
この物語は、その「電話」を通してのドラマです。 
時に混線し、時に聞き取りづらくなったり、
突然切れてしまったりしながら、
この物語の主人公「女」のドラマは展開していきます。

さて、名前の無い主人公「女」は、一昨日、
5年友に暮らした恋人、
こちらも名前の無い「男」から別れを告げられました。
 「女」は、「男」が最後に約束した「電話」を待っております。
この物語は、その「電話」を通じて、
「終わり」を演ずる男と女のお話です。

こちらは「女」の部屋。 
薄暗い部屋、乱れたベッド、
その横で床にうずくまる女。 
女は死んでしまったかのように動かない。 
やがて、女はのっそりと起き上がると
マントを羽織って戸口の方へ歩き出す。 
そこでかかって来る電話。 女は飛びつく。 
1本目・・・ 間違い電話 
「シュミット先生ではありません」と女は苛立つ。
2本目・・・ これも間違い電話。 
そして3本目、待っていた男からの電話。
 女はひととき、安堵の表情を浮かべる。
男からの問いに「10分前に帰ってきたばかりよ」と答える女。
女友達のマルトと食事をしていたのだと、嘘をつく。
女は気になる。 男は家に居るのだろうか・・・? 
女は探る、男はごまかす。 
そして女は、男の問いに嘘を重ねる。
「少し頭痛がするけど、元気にしているわ。 買い物にも行って・・
バラ色のドレスに着替えて、黒い帽子をかぶっているのよ。」
しかしながら、女は常に動揺し、落ち着かない。
突如激しく、「電話が切れてしまったら、絶対にかけ直してね」
と凄んだりする。
そのうち男は切り出す。 女の家にある男の荷物のこと。
女は言う。
「何時でも取りに誰かを遣してね。
辛いけど、解っているから、
謝らないで! 私自身、想像もつかなかったくらい、
私、気丈でいるのよ。」

4?20

男は女の様子がおかしいという。 女は取り繕う。 
自分は強いのだと、そして自分が悪いのだと。 
女は自分がいかに我がままであったかを語る。 
男は、男の母親が、女の事を心配していると慰めるが、
女はただ、心配する必要はないと言う。
男はそれから唐突に明日、
荷物を取りに人を遣わしてもいいかと聞く。
女は、動揺しつつも、
管理人のところに預けるからと、気丈に言い放つ。
「私のことは心配要らないわ。 
ここにいてもいいし、
田舎で過ごすのも悪くないわ・・ 大丈夫よ」

26?31

女は少しずつ、心の乱れが隠せなくなる。 
男の優しい言葉に感謝し、頷きつつも、不気味に呟く。
「もし、あなたが、ただ器用に私を慰めてくれているなら、
電話は恐ろしい武器になるのよ。後を残さず、音も立てずに」
男は女を「意地悪だ」と言い放ち、そして電話は切れる。 
女はあわてて男にかけなおす。
しかしながら、男の家に居たのは召し使いのジョゼフ。 
そして、男の不在と、男は今晩家には帰らないということを知らされる。 
その直後、男からの電話がなる。
女は平静を装う努力をする。 
男は電話を切り上げようとする。
女はいよいよ動揺が隠せなくなる。 心配する男。
女は先ほど電話でついた嘘について話し始める。
「バラ色のドレスなんか着ていない。 
食事もしていない。ただ、電話を待って、
行ったり来たり、狂ってしまいそうだった。 
意味も無くあなたの家までタクシーを走らせて、
待っていたりしたのよ」
男はなだめ、正直に何でも話すようにとなぐさめる。
女は真実を語り始める。
「昨日の夜、眠れずに、睡眠薬を飲んだの。
でももっと飲めば、もっと眠れる。
全部飲んだら、夢も見ず、
目覚めることもないだろうと思ったの。」
女は昨晩自殺を図ったこと、
それも未遂に終わり、
死に切れずに居る事を告白するのだった。

46?64のcheriの前まで

「こんな会話、耐えられないわね。良く我慢してくれているわ。」
女は男に謝る。 それでも苦しみを解って欲しいと訴える。
一昨日、男に別れを告げられた女は、電話を抱いて眠った。
ベッドの中で。男と繋がるものの側で。 
女は言う。 「だって、あなたが、話しかけてくれるから」
そして女は、男との5年間を振り返る。
女にとって男だけが全てだった。
男を待つことで時を過ごし、男の帰りが遅いと、
死んでしまったのかと思う。
そして男が一緒に居る時でさえ、
又出かけていくのが怖くて死にそうだったと。
そして女は言う。
「今は、電話で話しかけてくれるから、生きていられるのよ」

73の3小節前?78

「安心してね、2度も続けて自殺なんて図る人は居ないわ。」
女は言う。 ピストルなんて持っていないし、買い方も知らないとおどける。
続けて女は恐ろしげに語り出す
「もし、あなたが嘘をついていたとしたら・・・ 
例えば・・・あなたが本当は家に居ないのに、
居るといっていたり・・・ 
それがあなたの優しさであっても、
あなたへの想いは増すばかりなのよ」
そして突如電話が切れる。 
女は祈る「もう一度電話をかけて!」
そして程なく電話が鳴る。
「わかってるわ。そろそろおしまいね。・・でも辛いわ。
向かい合って話をしているみたいなのに、終わってしまったら、
急に遠くになってしまう・・・」
そして女は再び自殺をほのめかす。
電話の線を首に巻きつけているのだと。
そうして終わってしまったら、
男は女よりも辛い別れになるだろうと。
男は、マルセイユへ行く話しを始める。
女は、いつも2人で泊まったホテルには行かないようにと願う。
女は吹っ切れたように男に電話を切るように言う。
最後に「愛している」という言葉を繰り返し、
女の声は微かなものになっていく。

91の1.5小節前?最後

プーランク: 人間の声 雑感

40分のモノオペラ、人間の声を見始めて、
約2週間ほど。 やっと全部の対訳を作り、
やっと譜読みが終わった。 問題箇所は山積み。
とにかく、会話なので歌詞が多く、おまけに取り止めが無く、
さりげない展開の繰り返し。
勉強していて、イライラしてくる。

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私は過去に1度だけ、大失恋をしたことがある。
悲しくて悲しくて、毎日声を出して泣いていた。
当時、大学院生。 車で通学していたのだが、
実家で泣いていると心配されるので、
いつも車の中で泣いていた。
それこそエーンエーンと泣いていた。
車から一歩出ると、気丈にしようとしていたが、
仲間と話をしていて、ふと何かで関連して悲しくなり、
時にはお手洗いに行くふりをして泣き、
酷い時は、仲間の前で泣いた。
友達の友達、という初対面の女性の前でも泣いた事がある。
泣いても泣いても、悲しみは去っていかなかった。
それでも半年、1年と時間が経つと、
色々な事が形になっていく。
そして、3年5年と経つと、思い出すことも少なくなる。
そして、10年以上経つと、自分のことではなかったような気がする。
そして、今、13年経っているが、
記憶喪失かと思うほどに思い出せない。
ただ、いい経験をしたと思うだけ。
あの失恋があったからこそ、今の自分が形成され、
強く生きられるようになった。

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人間の声を演ずるにあたって、
自分にも同じような経験があったなと思い出したが、
結局役作りをする上でプラスにはならない。