修道院の面会室。ブランシュの兄である、ドゥ・ラ・フォルス騎士が面会に来ている。
「あなたは目を伏せたままもう長い時間黙ったままだ。
それが兄を迎える態度だというのか?」
「神はご存知です。私はあなたを嫌な気持ちにさせたくないことを」
「手短に言うが、父上は、ここがもう安全ではないと言っているのだ」
「私が居るべき場所ではないのかもしれません。
でも私は満足しています。そう思うのです。」
「あなたは変わってしまった。今のあなたはぎこちなく、無理をしているようだ」
「ぎこちなく感じられるのは、私がまだ不慣れで不器用なためです。
幸せで解放された幸福を実行できていないのです。」
「幸せなのかもしれないが、解放されては居ない。
あなたには、そう簡単に自然を克服することはできないはずだ」
「まあ、それでは、カルメル会での生活が、
あなたには私の本質に適していると?」
「このような時代だと、みんなから羨まれていたような女性が、
よろこんであなたの立場に変わりたいと申し出るだろう。
辛いことを話すようだが、召使に囲まれ、一人きりの父上の姿が目に浮かぶのだ」
「あなたは、私が恐怖心からここに居るのだと言うのですか?」
「恐怖に対する恐怖とでもいうか、その恐怖に優越は無い。恐怖に過ぎない。
死の恐怖に身をさらすように、恐怖の危険を知るべきだ。
その危険の中に本当の勇気が・・」
「私はここでは単に、神に捧げる小さな生贄に過ぎません」
「ブランシュ、先ほどのあなたは、弱弱しく倒れてしまいそうに見えた。
私は、粗末なオイルランプの明かりに照らされ、子供時代を思い出した。
私たちがいがみ合うのも、ぎこちなさのため。
それとも、僕の小さなウサギは変わってしまったのか?」
「ああ、なぜ毒をまくように私を惑わせるの?
その毒のせいで危うく命を失うところだった。
そう、私は変わってしまったわ!」
「何ももう、怖くは無いのですか?」
「私はもう何からも傷つけられません」
「それではさようなら、愛しい人。」
「ああ、わだかまったままさよならをおっしゃらないで。
ああ、あなたはずっと長い間、私を憐れんでくださる・・
憐れみの代わりに、ただ、お友達のように私を認めてください」
「ブランシュ、今度はあなたが厳しいことを仰るのか」
「私は優しく愛情をこめてお兄様にお伝えしております。
でも、私はもう、小さなウサギではないのです。
私はカルメルの娘です。あなたのために苦しみを背負うのです。
ですから、お願い、私のことを戦友のように思ってください。
これからの戦い、それぞれのやり方で、
私の戦いも、危険を抱えたお兄様のものと同じなのです。」
兄は複雑な表情で部屋を出て行く。
ブランシュ倒れそうになる。
「しっかりしなさい!ブランシュ!」
「ああ!私は嘘をつきませんでしたか?自分を見失っているでしょうか?
ああ!私は彼らの憐れみに疲れ果てたのです。神よ、お許しを!
やさしくされるのはうんざりです。ああ、彼らにとって
私はずっと子供のままなのでしょうか」
「さあ、もう行かなくては・・」
「私は高慢でした!きっと罰せられるに違いありません」
「高慢に勝つ方法は一つだけ。それより高いところに行くのです。
誇り高く居なさい!」